Lombok blog
ロンボクブログ
ロンボク人の独特な結婚文化

こんにちは、ファリッドです。
今回はロンボク島のササック族に伝わる有名な伝統のひとつ、メラリッ(Merariq) についてお話ししたいと思います。
メラリッ(Merariq)は、ササック族特有の結婚の伝統であり、他にはない独自の特徴を持っています。多くの地域では結婚が正式な求婚から始まりますが、ササック族の伝統では最初の段階が「誘拐」または mererarik と呼ばれる花嫁候補を男性側が連れ去る儀式から始まります。
しかし、ここでいう「誘拐」とは犯罪行為ではなく、あくまで象徴的な慣習です。通常、この行為は双方の合意と自発的な気持ちの上で行われます。女性は自分の家から男性側の親族の家へと「連れ去られ」、そこから結婚に関わる一連の儀式が始まります。メラリッの伝統は代々受け継がれ、ササック族の人々が祖先と文化に敬意を払う象徴的な慣習となっています。

「セラバール(Selabar)」と呼ばれる正式な通知の儀式が女性側の家族に行われた後、男性側の家族は アジ・クラメ(Aji Krame) と呼ばれる一定の金銭や財産を支払う義務があります。アジ・クラメは、他人の娘を「連れ去った」ことに対する敬意と同時に「償い」として解釈されています。
その金額は家族の社会的地位や学歴、あるいは両家の合意によって大きく異なります。特に貴族階級(プルワングセ Perwangse)の家族の場合、その額は非常に高額になることもあります。この伝統は尊重の形として広く受け入れられてきましたが、一方で男性側に大きな経済的負担を課す可能性があるため、批判の対象にもなっています。

さらに、メラリッの伝統においてよく見られるのが 若年での結婚 です。18歳になる前に結婚させられるカップルも少なくなく、慣習が国の法律よりも優先されると考えられているのです。
しかし、若すぎる結婚には多くのリスクがあります。健康への影響、教育の中断、そして経済的にも精神的にも未熟な若者の将来に大きな影を落とす可能性があります。インドネシア政府はすでに結婚の最低年齢を男女ともに19歳と定めていますが、ロンボクでは「伝統を守る」という理由から未成年婚の慣習が今なお多く見られるのが現状です。

すべての結婚儀式が終わった後に行われる、非常に重要で人々が楽しみにしている伝統のひとつが ニョンコラン(Nyongkolan) です。ニョンコランとは、結婚式の後に行われる新郎新婦の行列のことで、新郎新婦は大家族や親戚とともに新婦の家へ向かって練り歩きます。その際には、ササック族の伝統音楽である ゲンダン・ブレック(Gendang Beleq) の演奏が華やかに響き渡ります。
ニョンコランは単なるお祝いではなく、二人が正式に夫婦となったことを象徴すると同時に、両家の結びつきをより深める意味も持っています。さらに、この行列は地域社会への敬意を示す場であり、「この結婚が無事に執り行われました」と周囲に知らせる役割も果たします。多くの場合、ニョンコランはにぎやかで喜びに満ちた雰囲気で行われ、ササック文化の華やかさを一層引き立てています。

メラリッ(Merariq)とニョンコラン(Nyongkolan)は、ササック族の結婚習慣において切り離すことのできない大切な伝統です。mererarik、アジ・クラメ(Aji Krame)、そして華やかな行列であるニョンコランに至るまで、そのすべてが祖先から受け継がれてきた豊かで力強い文化的価値を物語っています。
しかし、その美しい伝統の陰には、未成年婚の慣習やアジ・クラメによる経済的負担といった課題も存在します。より現代的な理解をもって臨むことで、若い世代の権利を犠牲にすることなく、この伝統を守り続けることができるのです。
ロンボク島は自然の美しさだけでなく、独自の文化や伝統によっても魅力あふれる場所です。もしロンボクを訪れるなら、ササック族の結婚文化にもぜひ触れてみてください。そこには、受け継がれてきた物語と貴重な知恵が息づいています。
次回は私もまた皆様に興味を持ってもらえる記事を書きたいと思います。
最後まで読んでくださりありがとうございました